Vegetables & Fruits Column

◆クサマヒサコのデパ地下メモ

 

 

■亀戸大根

 デパ地下で目を引かれるのは京野菜ばかりではありません。東京近郊の畑から届いた、生き生きした野菜たち。そのなかでひときわ美しく魅力的だったのが、亀戸大根。にんじんを少し大きくしたようなサイズ、青々とした葉っぱ、ほっそりしたまっ白な根。たおやかな美女を思わせる姿。秋から冬に種をまいて早春に収穫される、東京産の大根です。

 亀戸大根は江戸時代から伝わる野菜です。文久年間(1861〜64)に栽培が始まり、明治時代には「於多福(おたふく)大根」、「おかめ大根」などと呼ばれていました。「亀戸大根」と産地の名前で呼ばれるようになったのは大正以降。主に栽培されていたのは江戸川区亀戸の香取神社周辺といいます。当時は荒川水系によってできた肥沃な土だったので、大根づくりに適していたわけです。

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 いま、このあたりは都市化され大根畑はなくなりましたが、復活運動が実って、葛飾区で3軒の農家がつくっているほか、関東の数カ所や北海道などでも。わたくしが手に入れたのは、葛飾区の佐野慶一さん作のものです。

 亀戸大根が復活するきっかけとなったのは、料亭のおかみの発想といいます。土地にちなんだ名物料理をつくろうと考え、かつてこのあたりでとれていた深川のあさりと亀戸の大根を材料にした、あさり鍋が生まれたそうです。

 このあさりと大根の鍋、「深川鍋」とも言うらしいのですが、この名前から連想するのは「深川丼」と「深川飯」。わたくしはなぜか、「深川丼」はあさりとねぎのお汁をご飯にかけたもの、「深川飯」はそれを炊き込んだもの、と信じていましたので、「深川鍋」もあさりとねぎの鍋だろうと。一説によると、深川丼にはあさりではなくはまぐりを使うとか、ねぎではなく菜っぱを入れるとか、いろいろありますので、ま、要するに深川近くでとれた貝と野菜を使えば「深川○○」なのでしょうね。

 大根の話にもどって。名物「あさり鍋」をつくるには、かつて亀戸でつくられていた大根が必要です。そこで、料亭のおかみが葛飾区に残っていた生産農家に栽培を依頼したのが、約10年前。いまは、手に入らない時期は北海道の農家に頼んだものが届き、一年中注文に応じられるとのことです。

 名前のもとになった亀戸でも、地元商店街が亀戸大根をテーマにした町おこしを企画。栽培農家はなくなっているので小学校で栽培してもらい、「大根収穫祭」と、収穫した大根を無料で配る「福分け祭」を行なっています。祭の会場は、昔の栽培の中心地だった香取神社。ここには亀戸大根栽培発祥を記念して「大根の碑」もつくられたとか。今年のお祭は3月21日(金)なので、わたくしも見に行ってきます。

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 さて、わたくしがつくったのはあさりと大根のお鍋。鍋に入れたのは、根の部分をゆでて。あさりはむき身をたっぷり使い、味噌仕立てにしました。葉はやわらかいので、浅漬けに。デパ地下の人は「大根おろしにすると辛いよ」と言っていましたが、あさりといっしょに煮た白い肉質はとても緻密で味わいがありました。

※ 写真 亀戸大根 東京都葛飾区佐野慶一作 500g 300円

 

2003/3/17 クサマヒサコ