Vegetables & Fruits Column

◆クサマヒサコのデパ地下メモ

 

 

■かぼちゃは瓜なんだ

 野菜売り場に不思議な形のかぼちゃがありました。半分に切って売られていますが、あと半分をつなげた全体のカタチを思い浮かべると、長くてウリみたい。なるほど、「南瓜」と書いてかぼちゃと読むわけだ。「飛騨宿儺(すくな)かぼちゃ研究会」のシールが貼ってあります。

 「宿儺(すくな)かぼちゃ研究会」があるのは、飛騨丹生川(にゅうかわ)村。飛騨の人々とこのかぼちゃとの出会いは約10年前。新潟から来た杜氏が、家でつくったかぼちゃを置いていきました。食べるとおいしいので栽培が始まりましたが、そのころの市場ではカタチのせいで断られたといいます。やがておいしさが評判になり、いまではデパ地下にまで進出したというわけです。

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 新潟県から岐阜県へ、ずいぶん遠いような気がしますが、野菜はこうして伝える人がいて、地域を越えてひろがっていくんですね。

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 このかぼちゃ、読みにくいネーミングですが、宿儺(すくな)というのは飛騨に伝わる人物の名前。その姿を刻んだ「両面宿儺像」が、飛騨高山・千光寺にあります。「両面」という名のとおり、顔がふたつ。ひとつは怒り、もう一つはほほえみを浮かべて。この地方にたくさん残っている円空仏のひとつです。

  日本書紀によると、両面宿儺は「体はひとつ。顔が前後にふたつ。手足はそれぞれ4本。力は50人力。4本ある手で弓矢や剣を同時に用いて、皇命に従わなかったので征伐された」という怪物。大和朝廷の力がおよぶ前、飛騨から美濃一帯を治めた豪族だったらしい。

  なぜ、その豪族の名前がかぼちゃについたか。宿儺は、地域を統率しただけでなく農耕の指導者としても偉業を成したのだそうです。

  11月最初の土日、丹生川村では五穀豊穣を感謝する秋祭り「宿儺(すくな)まつり」が行なわれたと聞いています。武勇を讃えられながら五穀豊穣と結びつけられるのはちょっと不思議な気もしますが、これが両面の真の意味なのかもしれませんね。

 ところで宿儺(すくな)かぼちゃですが、皮はそれほど固くなく、ふつうのタイプより扱いやすかった。
では、ポタージュをつくろう。大きめのサイコロに切ってチンして味見。甘くホクホクしていました。みじん切りのたまねぎをバタで炒め、かぼちゃを入れ、スープストックを加えて20分ほどコトコト。さめてからフードプロセッサでなめらかにしてなべにもどし、スープストックと牛乳を入れて加熱。最後に塩こしょう。器に盛って生クリームをすーっと浮かせて、いただきまーす。

 宿儺(すくな)かぼちゃは、半分に切って売られていました。長さ約18p、いちばん太いところの直径約15p。769g 384円。

 このかぼちゃを飛騨丹生川村へもたらした杜氏のふるさと、新潟では、いまつくられているのでしょうか。ちょっと調べてみましたが、わかりませんでした。ご存じの方がいらしたら、教えてください。

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2002/11/05 クサマヒサコ