Vegetables & Fruits Column

◆クサマヒサコのデパ地下メモ

 

 

■亀戸大根 続き

 先日デパ地下で見つけた亀戸大根は、葛飾の生産農家のお作。地元亀戸に作る人はなく、商店街が数年前から地元の小学校に栽培を依頼しているといいます。その収穫祭&福分け祭があると聞いて、行ってきました。前号でお知らせした3月21日ではなく、23日(日)でした。

 亀戸大根は、江戸時代「おかめ大根」、「お多福大根」と呼ばれたといいます。また、「福分け大根」という別名もあったとのこと。どれもおめでたい名前ばかりですね。で、亀戸大根を分けていたただくお祭りを「福分け祭」というわけです。

 JR亀戸駅から歩いて7〜8分。もうそろそろ会場の香取神社に着いてもよさそうだと思ったら、前から来る人の自転車のかごから見覚えのある葉っぱがのぞいています。これは近いぞ。と、お祭りらしい太鼓の音が響いているほうに、香取神社の鳥居が見つかりました。

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 ここだ、ここだと入っていくと、亀戸大根の石碑。新しいらしく、ピカピカ光っています。その台に腰掛けて、何か食べている人たち。

 なんか状況がのみこめないまま、ぼんやりまわりを見回していると、「あと少しですよ〜。2本200円〜!」と叫んでいる声が聞こえて、思わず近づいていきました。

 細長い台の上、中央に亀戸大根の束が置いてあったらしい形跡。もう係の人が手に持っているだけしか残っていないようです。

 台の前、左には大黒さま、右には恵比寿さまが待機しており、2本200円也で買った人の頭上で打ち出の小槌をふってくださる。

 これが「福分け祭」なのね。わたくしも最後から2人目の福を分けてもらいました。

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 石碑の台や庭の石、縁台など思い思いに腰掛けている人たちが食べていたのは、みそ汁。もちろん亀戸大根入りです。

 テレビの「今日の全国各地のようす」によくでてくるシーンですが、私は初めてでした。

 荷物を持っていたので食べづらかったけれど、同じものをいただくと地元に溶け込んだような気分になれます。なんかお祭りっぽいですね。

 
 帰り道、お昼にはちょっと早かったのですが、亀戸大根復活のもとになったお料理屋さん「升本」で昼定食をいただきました。11時半というのに満席に近く、ずいぶんはやっていることがわかります。やがて運ばれてきたのは、あさりと野菜類がグツグツ煮えている銘々鍋。亀戸大根は生のまま薄切りにして、別皿にのっています。「この煮立っているところへ大根を入れると、ちょうどぐあいよく煮えますので、それでめしあがってください」。ふむ、なるほど。

  「それからこちらのおひつには麦菜飯が入っております。お茶碗によそって、その上にお鍋のなかみをかけてめしあがっていただくようになっております」。ほー、いわゆるぶっかけ飯ですね。やっぱり原型は深川丼なんだ。木場に働く人たちの、早くて安上がりでおいしい食べ方。それに比べると、升本の鍋仕立てとおひつ、という登場の仕方は上品すぎますけれど、食べ方は昔と同じ。その上品とはいえないところもおいしさのうちなのかもしれない。 

家に持って帰った亀戸大根は、升本のまねをして、きんぴら風にしてみました。ほろ苦くて、なかなかいいお味にできました。でも、大根そのものはこの前食べたデパ地下モノとは、ぜんぜん違う。うーん、ちょっと粗雑といおうか、なんといおうか……。小学生の作ったものといっしょにしたら、生産農家にしかられるね。

 さて、突然ですが、クサマヒサコのデパ地下メモは今回でオシマイです。
取材にご協力くださったみなさま、E-mailをくださったみなさま、なによりも読んでくださったみなさま、ありがとうございました。また、どこかでお目にかかりましょう。

2003/3/25 クサマヒサコ